The Rime of the Ancient Mariner (老水夫の歌) Part2 / Samuel Taylor Coleridge [読書]



The Rime of the Ancient Mariner (老水夫の歌) Part2 /

Samuel Taylor Coleridge




老水夫の歌 第2部


憂いの時が流れた。皆の喉はひからび、皆の眼は濁っていた。
憂いの時!憂いの時だ!
眼はそれほどまでに濁っていたのに、
私が西方を見つめた時に、
彼方に何かが見えた。

老水夫は遠くに物影を見つける。

始めそれは小さな点のようだった。
それから靄に見えるようになった。
それはどんどんと近づき、とうとう
はっきりそれと分かる形になった。

そうだ!点から靄、そしてあの形に。
それは更に、更に近づいてきた。
まるで水妖からのがれるように、
それは前進し、波を切り、舵を切った。

近づくにつれ、それが船だとわかるようになり、老水夫は代償を払って喉の渇きを取り去り、知らせを告げる。

ひからびた喉で、ひび割れ黒ずんだ唇で、
我らは笑うことも泣くこともできなかった。
ひどい乾きのせいで、我らは沈黙の中に竦んでいた!
私は腕をかみ切り、血を啜り、叫んだ。
船だ! 船だ!

一瞬の喜び

ひからびた喉で、ひび割れ黒ずんだ唇で、
皆は顎を落として私の叫びを聞いた。
ありがたい! 皆は喜びで笑みを浮かべ、
すぐに大きく息を飲み込んだ。
まるで水を飲むように

そして恐怖は続く。いったいどんな船が風も波もなく前進できるというのか。

見ろ!見ろ!(私は叫んだ)船はもう波を切らない!
我らを助ける喜びの船が来る。
風もなく、波もないのに、
船は竜骨を掲げて真っ直ぐに来る。

西方の波は一面に焔と化し、
日は終わろうとしていた。
西方の波の上に
燃えて輝く太陽が載っていた。
そして突然に、あの奇怪な物影が
太陽と我らの間に割り入った。

老水夫を惑わすそれは骸骨船だった。

太陽の真っ直ぐな光は格子状に遮られた。
(天の御母が我らに恵みをくださった!)
牢獄の格子の隙間から、
太陽が尊大に輝く顔を覗かせたようだった。

なんてことだ!(思うと同時に鼓動が高まった。)
船はなんと速く、速く近づいてくるのだろう!
陽光の中のあの船の帆は、
燦めきながらゆれる蜘蛛の糸のようではないか?

船の肋材が太陽を格子で遮ったように見せかけていた。
女幽鬼と彼女の死の連れ合い以外の何も、その骸骨船には乗ってはいなかった。

あの船の肋材が、
太陽が覗いた格子だったのだろうか?
そしてあの女だけが船員なのか?
そしてあの死骸は?彼ら二人だけなのか?
あの死骸は女の伴侶なのか?

船に見えた、船員に見えたのに!

彼女の唇は赤く、彼女の眼光は鋭い。
彼女の髪は黄金のように黄色い。
そして彼女の肌はレプラ病のように白い。
彼女こそは悪夢に彷徨う死霊、
その冷気で人の血を凍らせる。

死者と死霊は船員を掛けて骰子を投げ、彼女は(後に)老水夫に勝ちをおさめる。

衣をはぎ取られた船体が近づき、
二人は骰子を振っていた。
「勝負あったね!勝った、私の勝ちだよ!」
三度口笛を鳴らし、女は言った。

夕暮れを残さずに太陽が消え、

陽の欠片が落ち、一挙に星が輝き、
またたくまに闇がやってきた。
海上にかすかなささやきを残し、
亡霊船は矢のように消え去った。

そして、月が現れる

我らは耳を欹て、横目で眼を凝らした!
器を啜るように、恐怖が私の心臓から
私の生き血を啜ってゆくようだった!
星が朧になり、夜が濃くなった。
明かりに照らされた舵手の顔は蒼白で、
帆からは露がぽとりと滴り落ちる――。
東の水平線の上に、
鋭く欠けた月が、その切っ先に
輝く一つ星を伴っている。

一人、また一人、

だれも、かれも、月に従う星に引き起こされた
荒すぎる息のせいで、呻きも嘆きもできず、
皆が悲痛の形相をこちらに向け、
その眼で私を呪った。

船員達が死に倒れる。

4を50も掛けた数の男達が、
(嘆きも呻きもあげることなく)
どさりと重い音を立て、命ない塊となり、
皆が、一人、また一人と倒れていった。

しかし、老水夫には死霊によって魔法がかけられている。

魂たちは肉体を離れ、空を飛んだ――。
皆、天か地獄へと飛び去ったのだ!
まるで私の石弓の矢のように、
全ての魂が、私をかすめて放たれていった。


披露宴の招待客である若者は語りかける亡霊に恐れおののく

「老水夫よ!私はあなたが恐ろしい。
あなたのその骨のような手が!
褐色に焼かれ、細く痩せたあなたの姿は
まるで嬲られた海砂のようではありませんか。

しかし、老水夫は彼の肉体についての言及を遮り、浄罪の苦行について訴えた。

私はあなたのぎらめく眼が恐ろしい。
その骨のような手、ひどく焼かれた―――」
おびえるな、おびえるな、若者よ!
この体は崩れ斃れたものではない。

ひとり、ひとり、ただ、ただ、ひとり
広い、広い海上でただひとり!
いかなる聖人も哀れんではくださらなかった、
苦悶の中にいる私の魂を。

彼は凪に棲む怪物を侮蔑する

人々は皆、とても美しかった!
彼らは皆、死に横たわっているのに、
何千何万という卑しいやつらは
生きているのだ、私同様に。

これほど多くの死にもかかわらず、凪に棲む彼らには生が与えられていることを羨んだ。

私は腐った海を見渡し、
遠くまで眼を泳がせた。
私が腐った甲板を見渡すと、
そこには皆の遺骸が横たわっていた。

私は天を見上げ、祈ろうとした。
しかし、祈りの言葉が迸るより先に、
邪悪な囁きが喚起され、
私の心を塵のごとくに干上がらせた。

私は唇を閉じ、二度と開かなかった
眼球はドクドクと脈打っていた。
空と海と、海と空のせいで
私の疲れた眼に荷が重くのしかかるようだった。
そして私の足元には死があった。

しかし呪いは死人の目をした彼を生かし続けた。

亡者達の四肢からは冷たい汗が融けていた。
彼らは腐ることも臭うこともなく、
私を睨んだ眼差しも
決して消え去ることはない。

残された子の恨みは、天へ昇る魂を
地獄へと引きずるだろう。
あぁ!だが、亡者の眼に込められた呪いは更に恐ろしい。
七日七晩、私はその呪いの眼差しを直視していたのに、
まだ私は死ねなかった。





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揚羽蝶

『あかね さん』・・(老水夫の歌) Part2 も・・・放射能汚染水が流出して・・(私の考察は)

西方から放射能汚染された波の上に燃えて輝く太陽が載って居る光景が浮かぶ・・・

≪憂いの時が流れた。皆の喉はひからび、皆の眼は濁っていた。≫
≪憂いの時!憂いの時だ!≫予測された非常事態に対しての憂いが・鬼気せまる(妖雲)

身の毛も与奪恐怖が・・・
≪ひからびた喉で、ひび割れ黒ずんだ唇で、笑うことも泣くこともできず、波は一面と化し≫
日は終わろうとし・・・≪次、次、と死が生を食んで行く≫原発利権議員を選出した有権者・・

これも連帯責任か!これが我同胞が選んだ道≪今日が終わり、では明日はどうなる≫
<大和の国の終焉まで・延々と・修羅の道・を歩むのか・・一体何時まで・子子孫孫までか?

≪彼女の唇は赤く、彼女の眼光は鋭く、髪は黄金のように黄色い。悪夢に彷徨う死霊≫
生命を宿して戴く女性も・・人類を受け継ぐかわいい子供達も・・死の海に漂流し・・・

≪夕暮れを残さずに太陽が消え、陽の欠片が落ち、一挙に星が輝き≫・・満天の夜空に・・
果たして・・☆願い星(canopus)☆・・が水平線の彼方に・・昇って呉れるのか?・・・

幼い瞳を・・恒星の輝きが・・・見守って呉れるのでしょうか??

国民の誰もが・・・≪夜空を見上げて祈ろうとしても・祈りの言葉が迸るより先に、邪悪な囁き≪が喚起され、皆の心を塵のごとくに干上がらせる≫・・そんな想いが駆け巡る・・・・

※未来に夢を託す≪子の恨みは、天へ昇る魂を地獄へと引きずるだろう・・・≫

≪あぁ!だが、亡者の眼に込められた呪いは更に恐ろしい。
七日七晩、私はその呪いの眼差しを直視していたのに、まだ私は死ねなかった。≫

地震国、日本に・・原発設置を何故許したのか!!
愚かな政府(立法・行政)に・・日本の行く末を委ね・・坐して死を待つのみなのか!!

同盟国で有っても・・日本国民を身代わりに成って救いはしないでしょう!

事此処に及んでは 米国自治連邦区(Commonwealth )⇔米国50州の内のケンタッキーマサチューセッツ、ペンシルベニア、バージニアの 4 州同様に、政治的地位を持つ属領 ⇒ 保護領・自治領に組入れて戴く政治判断が望まれ時期到来と言っても過言は無い状況下

攻究の面も問われ・親日国からも、不信感を持たれ・・鼎の軽重を問われる政治では・・
正に、『物言えば唇寒し秋の風』・心豊かに・希望の持てる日本再生が必要と思われます。

『あかね さん』・・(老水夫の歌) Part2 に対する コメントには成りませんが・・・
           原発・放射能⇒海洋汚染水が暖流に乗り・・拡大の一途と想定して・・
           感じたままの所感を、コメントとして記載させて戴き失礼致しました。
           
         












by 揚羽蝶 (2011-10-30 19:25) 

あかね

揚羽蝶さん、こんばんは(^-^*)/

揚羽蝶さんの解釈通りです。
日本丸は日本全体のことです。
かじ取りは日本政府、乗組員は国民全体のことです。

「幸運の鳥」アルバトロス(アホウドリ)は、日本丸を正しい方向へ
導く道しるべ的人間でした。
しかし、その人間を日本政府はことごとく潰していった。

潰した連中が誘致した原発が核爆発をお越し、多くの国民が死亡
した。
アルバトロスの呪いが始まる。そこは死んだ日本国民の魂が殺された
アルバトロスに乗り移ったということですね。

そいういうふうに解釈すると、我国の状況が分かりやすいかと思います。

by あかね (2011-10-30 22:11) 

PATA

既にご指摘になっていることですが、わが国の状況とだぶる作品です。
これを読んで、お偉いさんが何も感じなかったと言うのは
よっぽど想像力に欠けた人物達ばかりなのでしょう。
ご訪問が遅れてすみませんでした。
by PATA (2011-10-30 22:47) 

揚羽蝶

『あかね  さん』・・(2011-10-30 22:11) /解説、ありがとうございました。

とっても高尚且つ、奥の深~い・・・・・weblog・・・・
当たらずしも遠からず?でしたでしょうか~・・・・ホット胸を撫で下ろしました。
**************************************************
「幸運の鳥」アルバトロス(アホウドリ)は、日本丸を正しい方向へ
導く道しるべ的人間でした。
しかし、その人間を日本政府はことごとく潰していった。
*** ※ ↑ 此れから先、悲劇の訪れる現実を・・直視しなければ成らない国民****

政治の本質をもっと、慎重に・・ちゃんと理解して・・・一言一句、論議願いたいものです。

何時も乍、ご教示・ご諫言戴き・・心より感謝申し上げます。

by 揚羽蝶 (2011-10-31 05:45) 

あかね

PATAさん、(*^-^)ノこんにちわ

本当にそうだと思います。
一体どういうふうに教育されれば、ここまで想像力がない人間に
育つのか、甚だ疑問に感じております。

対策はしない、予期せぬ問題は次から次へと発生する。
改革できる人間達を潰していくから対策も打てない。

バブル崩壊後、ずっとこの状態が繰り返し続いています。
この悪循環を止めるには、新しいやり方が必要です。

by あかね (2011-11-01 16:27) 

あかね

揚羽蝶さん、(*^-^)ノこんにちわ

次から次、問題が発生しています。
昨日、日銀が円高を食い止めるために介入しましたが、MFグローバル
が経営破たんし、また円が暴騰するでしょう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111101-00000325-reu-bus_all

これはもう食い止められません。
世界的に次から次、金融関係が破綻し続けていくと思います。

タイの水害で、日本企業が水没するなど、大変な状態も続いています。
幸運の鳥アルバトロスを殺したせいで、船は暴風域の中に入り遭難しか
かっているところです。
これをどう乗り切るか、日本政府は緊急に政策を打ち出す必要があると
思いますね。


by あかね (2011-11-01 16:33) 

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